ニセ2915注意報



オメガマニアはもちろん、クロノグラフマニア、ウォッチマニアの垂涎の的であるスピードマス
ターのファーストモデル、CK2915はとにかく希少である。
セカンド(2998)やサード(105.003)の相場が$650程度であった時代(10年程前)
に$2000代でオファーを受けたなどという話を聞いたことがあるが、とにかく流通量が圧倒
的に少ない幻の時計であった。
だがどうしたことであろうか、ファースト・レプリカが発売になり、ファーストモデルの相場が
急騰したのと同時に、この「レアモデル」をあちらこちらで見かけるようになった。
しかし、それらはオリジナル性が疑わしいものであるにも関わらず、希少性を売りに100万円
を超える高価格で販売されているのを幾度も目撃したことがある。
ここではサンプル画像を元に、それらの”フェイク”ファーストモデルの現状を検証し、悪質な
偽造品を見破るための参考資料になればと思う。




フェイクCK 2915 その1
ベースモデル:105.003(推定)
ベゼル:レプリカ用純製パーツ
文字板:レプリカ用純製パーツ
針(6本共):レプリカ用純製パーツ

90年代後半から市場に流通し始めた、フェイク・ファー
ストの第一世代である。初期型スピードマスターの中でも
比較的流通量が多いサードモデルに、レプリカ用のパーツ
を装着しただけの安直なフェイクであり、パーツの新品さ
加減とベゼルの不自然な大きさから比較的簡単にフェイク
と見破ることができる。文字板をレプリカ用に交換したの
は、針の夜光と文字板の夜光の色とを合わせるためだと思
われる。ちなみに、レプリカ用のベゼル、文字板、針はそ
のままだとサードモデルに装着出来ないが、少し加工を施
すと取り付け可能である。
当時、イタリア人からオファーを受けたと国内外の複数の
コレクターたちから情報を得ていたが、詳しく聞いてみる
と同一の売主であった。裏ブタ内側の刻印は2915−3
などと刻印し直してある。ムーブメントのシリアルナンバ
ーはサードモデルの年代のままのものが多かった。

フェイクCK 2915 その2
ベースモデル:105.003
ベゼル:レプリカ用純製パーツ
文字板:サードモデル用オリジナル
針(6本共):レプリカ用純製パーツ

左のサンプルは文字板以外は基本的に上のサンプルと同じ
組み合わせであるが、細部にわたり手が込んだ第二世代の
フェイク・ファーストである。文字板はサードモデルのオ
リジナル文字板を使用し、オリジナルの夜光インデックス
の焼け具合に合わせた色で、時/分針の夜光を盛り直して
ある。また、画像では解らないが、分針とセンターセコン
ドの先がオリジナル針のごとく手作業で微妙なカーブ付け
が施されている。実に芸が細かい(苦笑) ちなみに、レプ
リカ用の針は平らである。レジスター用の3本の針はホワ
イトに塗装され、いかにもそれらしく仕上がっている。
ステンレス製のベゼルは刻印の際まで削り込まれ、オリジ
ナル・ファーストのベゼル外寸の39mmに近い大きさに
仕上がっており、不自然さはない。
ビンテージ・オメガの針の質感、ベゼルの厚み/刻印の書体
及び文字盤のディティールの違いに詳しくなければ、オリ
ジナルと信じてしまうほどの仕上がり具合である。
フェイクCK 2915 その2裏
なお、このサンプルはオーナーの個人的な趣味で製作され
たもので、「私製レプリカ」の証しとして裏ブタをシース
ルーに改造してあり、ピンクゴールド・メッキが美しい
Cal. 321を見ることが出来る。
しかし、実際に流通しているフェイク・ファーストは裏ブ
タ内側の刻印を2915−2や2915−3などに打ち直
してある。(表はシーホースロゴ。)ムーブメントのシリア
ルナンバーも15XXXXXXや16XXXXXXなど
年代的に合ったものになっており、50年代後半のシーマ
スター・クロノグラフなどから転装されたCal. 321だと思
われる。

*市場に流通している典型的なフェイク・ファーストの2
パターンを紹介したが、レプリカのベゼルや針を装着した
本物のファーストモデルも流通しているようだ。
割れてしまったベゼル(オリジナルのファーストモデルの
ベゼルはとにかく薄くて華奢)や、傷みが激しい針を交換
したのだろうか・・・ 真相は不明であるが、レプリカパ
ーツ使用と表示して販売されていれば、特に問題はないと
思う。



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